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Home トップページ  >  今月の法語  >  「何の役にも立ちません」 物理学者小柴昌俊

2007年09月
「何の役にも立ちません」 物理学者

小柴昌俊

 今年の5月、公園のベンチで寝ていた男性に火を付け、全身の約3割をやけどする重傷を負わせたとして、少年(17)と他少年4人が、殺人未遂の疑いで逮捕された。主犯格の少年は、ホームレスを常々「乞食(こじき)」と表現していた。(※ちなみにもともと乞食は、(こつじき)といい、托鉢のことで、種々の規律がまもられて行われる仏道修行の一つであり尊い行為である。) 「乞食は人間として最低。イヌ、ネコと同じ。世の中の役に立っていない」と他の少年達に吹き込んでいたそうだ。世の中の役に立たなければ、殺してもいいということが彼の中では正義として成り立っているのだろう。
 また8月、米特使が記者会見で、「原爆使用が何百万人もの日本人の命を救った」と語った。広島・長崎で数十万人が一瞬のうちに殺戮され六十年以上たった今でも世代を超え病で苦しんでいる。ここでは、世の中の役に立ったという彼の正義が、「殺し」の正当化になっているようだ。
 年配の男性から「私たち老人は社会のために何も出来ない。役に立たない。早く死んだほうがいいでしょうか」と、質問された。確かに「社会のお役に立つように。人様のご迷惑にならないように。」と言われ続けて育った。しかし、私は、本当に迷惑をかけずに生きられるだろうか。生きていればよけいなこともするし、つまらないことも言う。助けられもするがうらまれもする。私が生きていること自体、すでに迷惑ではないか。役に立たなければ生きられない。用がないとここにおれないなら、私は、とっくに「生まれてすみません」と残して死ぬよりほかないだろう。
 宇宙ニュートリノの検出にパイオニア的貢献をしたとしてノーベル物理学賞を受賞した小柴氏に、記者が「あなたの研究は何の役に立つのでしょうか?」と質問した。その返答が今号の言葉だ。それは、「何の役にも立ちません。」だった。そう、何の役にも立たないのである。何か役に立たせようというのは技術であり、経済である。アインシュタインの相対性理論にしてもそれ自体はほとんど役に立たない。それを何か役に立たせようとして、技術が発展していく。その誤った成果が、原子爆弾である。小柴氏はなぜ何の役にも立たないことを一生懸命やっているのか。それは、ただ、「そうしたかった」からではないか。身が心が勝手に動いたのだろう。役に立つか立たないかは、その後の話である。
 仏教説話のジャータカ物語にこんな話がある。ある森が大火事になる。すべての生き物が逃げ出す中、一羽の小鳥が、なんとか火を消そうと自らの体を、池でぬらし、燃え盛る火に向かって、その小さな翼についた雫を二,三滴落とす。何度も何度も体を濡らしては、その雫を落とすということを繰り返す。それを天から見ていた神が言う。「おまえはなんて無駄なことをやっているのだ。そんな雫ごときで、この大きな山火事を消せるはずないではないか」すると小鳥は、「どうぞ私に構わないでください。あなたは絶大な力を持ちながら、何もしようとはしないではないですか。この森はわたしを育ててくれた森であり仲間たちがたくさん住んでいるのです。確かに私のやっていることは、何の役にも立たないかもしれません。しかし、今のわたしにはこうするより他ないのです。」 
 親鸞聖人は、「ただ仏恩の深きことを念じて、人倫の嘲(あざけ)りを恥じず。」といわれた。世間のお邪魔になろうとも、心ならずも、人様にご迷惑をおかけすることになろうとも、如来は、「生きていてもいい、ここにいてもよい」と仰ってくださる。わざわざ死に急ぐこともない。「なごりおしくおもえども、娑婆の縁つきて、ちからなくしておわるときに、かの土へはまいるべきなり。」(歎異抄)と、聖人のお言葉を有難くいただいて、自らを欺(あざむ)かない心と業縁のもよおしに随い、この娑婆世界を如来の大安心の中で、精一杯、生かさせていただきたい。

 清沢満之先生は『我が信念』の中で次のように信心を発露されている。 

「私が如来を信ずるのは、その効能によりて信ずるのみではない。・・・・・どうも人生の意義に就いて研究せずにはいられないことになり、その研究が遂に人生の意義は不可解であるという所に到達して、ここに如来を信ずるということを惹起(じゃっき)したのであります・・・・・私はこの如来を信ぜずしては、生きてもおれず、死んで往くことも出来ぬ。私はこの如来を信ぜずしてはおられない。この如来は、私が信ぜざるを得ざる所の如来である。」
證大寺本坊 大空

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